プロフィール
町田 涼太(まちだ りょうた)
出身:妙高市
UIターン前の居住地:東京都
現在の居住地:妙高高原地域
年齢:30代
仕事:宿泊業
経歴:会社員(教育関係)
UIターンした年:2022年
8.5キロメートルのロングコースが人気の杉ノ原スキー場。その麓にあるのが、妙高市杉野沢地区です。長年スキー客を受け入れてきたこの地域では、宿泊業を営む家庭も多くあります。
その1つ「サンヴィレッジまちだ」の長男として生まれ、大自然の中で育ってきたのが、今回紹介する町田涼太さんです。大学進学を機に県外に出てから、地元と都会、海外を行き来し、2022年に本格的にUターンしました。
現在は家業の宿を継ぐため、宿泊業や調理を学んでいます。地元を出て経験したこと、Uターンしてからの生活についてお話を伺いました。
家業への思いと、自分のやりたいこと
宿泊業を営む家に生まれ、小さい頃から日常的に家族以外の人と関わってきた町田さん。多感な時期には、自分の居住空間に家族以外の人がいるというストレスを感じることもあったと言います。
「一方でお客さんに可愛がってもらったり、いろんな世界の話を聞いたりと、人との付き合いの楽しさも感じていました。ぼんやりと、いつかは自分がこの宿の仕事を継ぐのだろうなという意識は持っていました。ただ自分の中にもやりたいことがあったり、見たい世界があったりして。10代の頃はこの宿の仕事を頭の隅に置きつつ、なるべく考えないようにしていたんです。」
人との出会いに導かれるままに、教育に携わった20代
地元の高校を卒業後、埼玉の大学に進学した町田さん。大学時代は心理学を学んでいました。卒業後は妙高市に戻り、市内の中学校の特別支援学級の支援員として働き始めます。
転機が訪れたのは、支援員の仕事がなくなる夏休み。たまたま再会した恩師に誘われて参加したのが、国立妙高青少年自然の家(以下、自然の家)で行われた12泊13日の長期キャンプでした。ボランティアスタッフとして参加した町田さんは、このキャンプをきっかけに自然の家の所長に引き抜かれ、翌年度から自然の家で働き始めます。
自然の家は、心豊かな青少年の育成を図ることを目的に、自然の中で多様な体験を提供している施設。妙高の豊かな自然環境をベースとした社会教育の仕事に充実感を覚えていた町田さんですが、この後もう一つの転機が訪れます。
それは自然の家の母体である独立行政法人国立青少年教育振興機構が実施する日独の交流事業でした。町田さんが参加した2週間の交流事業の中では、そのうち3日間をドイツのご家庭にホームステイする機会がありました。限られた時間でしたが、町田さんにとっては大きな選択のきっかけとなったのです。
「ホームステイ先のおじいちゃんとおばあちゃんが、とてもいい人だったんです。ヨーロッパの暮らしも気に入ってしまって、その場で『来年仕事辞めて来てもいい?』って2人に聞いたんです。そうしたら『いいよ』って言ってくれて、その場でドイツに行くことを決めましたね。」
帰国後は親の反対を押し切って、ワーキングホリデーのビザを取得。翌年5月にはドイツへ渡り、ホームステイでお世話になったおじいちゃんとおばあちゃんを訪ねました。
「当時はお金もない、言葉も喋れない、仕事もないという状態。ただ日独交流のときに出会った友達がドイツの各地にいたので、なんとかなるだろうと思っていました。そうしたら、住むところも仕事もとんとん拍子に決まって。決まった仕事というのが日本語学校の先生でした。」
▲「サンヴィレッジまちだ」に宿泊したお客様からのメッセージ。たくさんの縁が紡がれている。
行き当たりばったりにも思える町田さんの行動ですが、縁をつないだ先にあったのは教育関係の仕事。ここでも「先生」と呼ばれる仕事に就くことになります。
その後11ヶ月のドイツ生活を終えて、妙高市へ戻ってきました。帰国後は再び自然の家で働いた後、東京の会社に就職。発達障がいを始めとする、何かしらの困り感(注1)を持つ子どもの自立支援や親のサポートを行う塾の先生としても働きました。
教育関係の仕事に携わって約10年。その多くは人との出会いに導かれてきたと言えます。その理由を町田さんはこう語ってくれました。
▲常連のお客様からいただいたお土産を嬉しそうに眺める町田さん。
「人生のターニングポイントで、今後の道を決める判断材料になっているのは『人間関係』なんだと思います。『この人たちとならいい人間関係を築けそうだな』『この人たちと一緒ならいい体験ができそうだな』そう感じたときに自分は動いていますね。」
その根底には、小さい頃から関わってきた宿のお客さんとの思い出が刻まれているのでしょう。
外に出て気付いた地元・妙高の魅力
直感を信じて、さまざまな場所で暮らしてきた町田さん。外に出たことで気づいた地元・妙高の魅力があると言います。
「僕の趣味はスノーボードとサーフィン、登山なんです。ドイツにいたときは山も海も遠く、自分の趣味をやろうと思ってもすぐにできない環境で、物足りなく感じていました。その点、妙高は山、海、湖、川といった自然へのアクセスが抜群なんですよね。妙高の環境は自分の趣味にぴったりなんです。」
また地元に戻ってきて感じた「都会にはない妙高の魅力」をこう話してくれました。
「人のたくさんいる空間って、エネルギーを吸い取られてしまう感じがして、東京に住んでいるときは窮屈さを感じていました。吸い取られるだけならいいのですが、チャージもできないんですよね。妙高に帰ってきて、エネルギーが湧いてくるというか、チャージされているなって感じるんです。自然の中で趣味を楽しむのはもちろん、田んぼのあぜ道を通ったり、妙高山を眺めたり、それだけでもすごく気分が晴れます。妙高に帰ってきてから、自分が元気になった気がします。」
地元で広がる、新たな出会い
町田さんはもう一つ「Uターンしてから見つけた楽しみ」を教えてくれました。
「地元の友達だけではなく、移住者と友達になることが増えて嬉しいです。移住者がオープンしたお店で出会ったり、スキー場でたまたま隣になった人と仲良くなったり、地元にいても新しい出会いってあるんだなと思いました。外から来た方は、僕らとは違った視点を持っているので、一緒にいてとても楽しいです。」
生まれ育った地元を離れるとき、人は新たな出会いを求めて行くもの。しかし同じように他の地域から、この地にやってくる移住者もいます。
Uターンするということは、元々あったコミュニティに戻るという一面もありますが、一方では地元を離れている間に加わった新たなコミュニティに出会うという一面もあります。
町田さんにとって、それは都会や海外に行ったときと同じようなわくわくする出会いだったのでしょう。
人と人とのつながりが生まれる場所を作りたい
現在は、実家の宿を手伝っている町田さん。令和5年4月からは調理師学校へ通い、調理の勉強をします。家業の継承や今後の展望について伺いました。
「まずは母を休ませてあげたいんです。宿の料理は今までずっと母が作っていたので、お客さんがいるときは休むことができなかったんですよね。また、今まで自分が連れてきたお客さんには母の料理を楽しんでもらっていましたが、自分の料理を出してみたいなと思っているんです。母を休ませながら、少しずつ代替わりしていければいいかなと思っています。」
今後の宿泊業への思いを前向きに語ってくれた町田さん。10年間携わってきた教育分野に対しての未練はないのでしょうか。
「ないですね。教育のテイストを宿に生かしていきたいなという気持ちはありますが、具体的にはまだ想像できていません。また自然の家のスタッフとは今もつながっているので、なにか協力できることがあれば関わっていきたいと思っています。」
形は変わっても、町田さんが学んできたことは宿の運営やご自身の活動に生かされていくのでしょう。
最後にUIターンを考えている方へメッセージをいただきました。
「UIターンされる方って、いろんな事情があると思うんです。妙高の暮らしが好きで自ら求めて来る人もいれば、結婚を機にとか家族の事情で来るという人もいますよね。そういう人が妙高の暮らしに楽しみを見出せなくて苦しい思いをするのは、地元住民としてちょっと切ないんです。そういう方たちが集まれる場所としても、この宿を使えたらいいなと思っています。『妙高の暮らしって楽しい』と思ってくれるきっかけになればいいなと。そういう方がいればうちに遊びに来てください。ぜひつながりましょう!」
どんな人と出会うか、どんな人と共に過ごすかが、その後の人生の豊かさを変えます。そのことを身をもって知っているからこそ、今後は町田さん自身がその出会いを作る人になっていくのでしょう。
UIターンをするには、しっかりとした事前準備が必要なのはもちろんですが、直感や人との出会いも1つのキーポイントになります。「UIターン者の声」を読んで妙高市へ興味が湧いた方は、まずは遊びに行ってみる、短期滞在してみるのはいかがですか。
(注1)障がいの有無に関わらず、生活や活動の中で本人が困っていると感じること。特別支援教育の分野で使用され始めた言葉。
- 短期滞在したい方はこちら
- 町田さんご家族が経営する宿
- 町田さんが勤めていた施設。様々な自然体験活動ができます。
■Uターンする方が利用可能な補助制度(各補助制度には対象要件があります。必ず各リンク先をご確認ください。)
アパートや一軒家を賃貸する場合
新築を建てる場合や中古物件の購入、増改築をする場合
東京圏からUIターンする場合