プロフィール
川上 幹太(かわかみ かんた)
出身:妙高市
UIターン前の居住地:東京都
現在の居住地:新井地域
年齢:20代
仕事:個人事業(水槽メンテナンス管理)
経歴:会社員(水槽メンテナンス管理)
移住年:2023年
子どもの頃、当たり前にあった環境。他の地域で暮らしたからこそわかる地元の魅力に気付き、Uターンを決める方も少なくありません。今回ご紹介する方もそのお一人。妙高地域で生まれ育ち、市外での就職を経て妙高市に家族でUターンした川上幹太さんです。Uターンのきっかけや地元で起業した思いについて、お話を伺いました。
Uターンのきっかけは、子どもが生まれたこと
「もともと生き物がめっちゃ好きだったんですよ。東京に住んでいたときもアパートの一室で、モルモット5匹、ハムスター3匹、ハリネズミ3匹を飼っていました。小さい動物園みたいな感じでしたね。」
そう話し始めた川上さんは、子どもの頃から昆虫や哺乳類、爬虫類等、さまざまな生き物が大好きでした。
その中でも特に魚や水生生物に関心があった川上さんは、魚に関係する仕事を探した末、21歳のときに東京にある水槽メンテナンス管理を行う会社へ就職。
好きな仕事に携わり、場所と人にも恵まれ、充実した日々を送っていました。
そんな川上さんがUターンを考えたきっかけは何だったのでしょうか?
「1番は子どもが生まれたことですね。自分自身、自然豊かな場所で育って、これだけ自然や生き物が好きになりました。自分の子どもも、そんなふうに育てたいなと思ったんです。それに、安心して子どもを育てられるのはやはり地元なのかなと。」
奥様の実家も隣接する市だったことから、夫婦の意見は一致。
さらに、もう一つ決断を後押しするきっかけがありました。
「妙高に帰省したときに、兄と一緒に川に行ったり、山菜採りに行ったりするのがすごく楽しみでした。東京とは違う遊びができるんですよね。この生活が日常だとしたら、自分にとってはプラスしかないなと。それがUターンを決めたもう一つの理由です。」
やりたい仕事がないなら、自分で作るしかない
Uターンを決めた川上さんは、東京の会社を辞めて起業することを選びました。
「東京で経験を積んだ水槽メンテナンスの仕事を地元でもやりたいと思ったのですが、同じような就職先はありませんでした。ないなら自分で作るしかないと思い立ち、起業を決意しました。仕事がない理由は需要がないからではないと思うんです。水槽メンテナンスというサービスを知らなかったり、高額なイメージを持っていたりするのかなと。そういう部分を払拭できれば、需要はあるのではないかと考えています。」
「好きなことをやってほしい」と奥様からも応援してもらったことも、大きな後押しになりました。
川上さんが携わる「水槽メンテナンス管理」とは、お客様のご自宅や店舗に観賞用水槽を設置し、定期的なメンテナンスを行うお仕事。それだけ聞くと、単純な作業のように感じますが、実際はそれだけではありません。
お客様のご要望に沿って、魚の種類、水槽内のレイアウトなどを提案することから始まり、定期的に魚たちの様子を観察し必要なメンテナンス、飼い方のアドバイスを行うことまで。
ただ単に水槽を設置するのが目的ではなく、ご自宅での癒し空間や家族団欒の場の提供、店舗のイメージアップを実現することを目指しています。
ただ、実際にUターンし起業した1年目は、とても大変だったと言います。
「前年度まで会社員だったので、税金や保険料で出ていくお金が結構あって。妻と子どもを養っていくためには自分の仕事だけでは賄えないので、友達の土木会社で働かせてもらっています。その仕事と数件の水槽メンテナンスの仕事を受けながら、なんとか生活してきたという感じですね。起業すると決めたときに、最悪どんな仕事でもする覚悟は持っていました。」
また起業にあたっては、NICO(注1)の補助金も活用したそう。ホームページの作成や道具の購入をすることで、本格的に事業を始める準備を整えることができました。
「カフェやホテルなど実店舗がある事業ではない難しさも感じていて。メンテナンスを依頼してくれたお客様のお店に名刺を置かせていただいたり、営業に行ったり、今後は少しずつ水槽メンテナンスの仕事を増やしていきたいなと思っています。実は前職の社長にも事業の相談に乗ってもらっていて、いまだにお世話になっているんですよ。」
やりたいことを応援する風土がある
そんな川上さんのご実家は酒屋さん。Uターンしてからは、お店の仕事を手伝ったり、店番をしたりすることもあるそう。
「お店に立っていろんなお客様と話すようになって気付いたことがあるんです。今までなんとなく顔は知っていた方と、面と向かってお話する機会が持てたり、そこからつながりが広がることが多くて。そういった関わりができるのは、すごくよかったですね。」
いままで当たり前にあった環境も、改めて見つめ直すと新たな発見がありました。
「妙高の人って温かいじゃないですか。やりたいことがあると話せば、力を貸してくれる人が絶対いると思います。面白がってくれる人、アイデアをくれる人、提案して手伝ってくれる人。『何かやりたい、でも悩んでいる』という人がいれば、まずは妙高に来ていろんな人と話してみるといいと思います。移住するしないに関わらず、挑戦する人を受け入れてくれる地域かなと思います。」
自然と生き物に囲まれて遊べる日常
元々自然や生き物が好きで、よく川や森へ遊びに行くという川上さん。実はUターンしてから、新たに始めたことがあると言います。
「兄に誘われて関川水系漁業協同組合(注2)に入ったんです。実際にどんなことをしている団体なのかよくわかっていなかったんですけど、定期的に魚の放流をしたり、外来種の駆除を行ったりといろいろな活動をされていて。自分もその活動に携わらせていただいて、勉強になりますし、すごく面白いです。」
(画像提供:川上幹太)
また自分だけでなく、2歳になるお子さんとも虫捕りを楽しむこともあるそう。
「やっぱりこういう遊びは東京ではできないなと思うと、Uターンしてよかったなと感じます。娘なので、いつか嫌だって言う時期が来るかもしれないですけどね。」
自分にとって大事な軸があれば、あとは覚悟だけ
最後にU・Iターンを考えている方へ、メッセージをいただきました。
「僕も10代の頃は、妙高って不便な場所でしかないと思っていました。東京で生活していたときは、歩いて行ける範囲にお店がたくさんあったし、ウーバーイーツが当たり前にある環境でした。だからUターンしたらもっと困ると思っていたんです。でも実際はそんなこと全然なくて。人間あるもので対応できるんだなと思いました。」
ライフステージの変化によって、求めるものも変わり、見える世界も変わります。
「必要最低限のものを買えて、今日はどの川に、森に行こうって考えられる日常があることが幸せですね。自分はそれに気づくのが比較的早かったかなとは思っています。そういった自然環境も半永久的にあるものではないので。心ばかりですけど、生き物に関する仕事をしていることで何かしら自然を守ることに繋ればと思っているんです。
もし自然の魅力に気付いた人がいたら、妙高に来て一緒にこの環境を守ってくれたら嬉しいですね。そして自然の楽しさをもっとたくさんの人に知ってほしいなと思います。」
川上さんが求めていたのは、自然と生き物に囲まれたライフスタイル。その大事な軸があるからこそ、本当に必要なものとそうでないものを、自分の中で選択していけるのかもしれません。
自分にとって大事な軸が見つかれば、あとは「なんでもやってやるという覚悟」があれば大丈夫。
川上さんのあり方は、そんな力強いメッセージを表しているようです。
(注1) 公益財団法人にいがた産業創造機構。新潟県内での創業や新規事業開拓、経営改善などをサポート。相談窓口や補助金受付、セミナーの実施などを行う。
(注2) 新潟県上越地域を流れる関川水系の遊漁管理をしている組合。年間を通じた環境保護活動、魚資源の育成や放流活動を行う。
■撮影協力:Cafe Nekoji
▲川上さんの管理する水槽と魚を見ることができます。
■川上さんのお仕事
観賞用水槽の設置・メンテナンス
■移住者が利用できる補助制度
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