プロフィール
角野 忠雄(かどの ただお)・角野 美幸(かどの みゆき)
出身:大阪府
移住前の居住地:大阪府
現在の居住地:矢代地域
年齢:70代
仕事:無職 (古民家で自給自足生活)
経歴:会社員、定年後自営業(介護用品企画開発)
移住年:2019年
子どもの頃の体験が今につながる
(画像提供:角野忠雄)
妙高市での暮らしを始めて、3年目になる角野さんご夫妻。都会生まれ都会育ちのお2人が、地方での暮らしを考えるきっかけとは何だったのでしょうか。その根底には夫・忠雄さんの子どもの頃の体験が大きく影響していました。
忠雄さん(以下敬称略)「中学2年生のときに、夏の合宿で野尻湖(注1)に来たんです。森と湖の素晴らしい環境で、今まで経験したことがない雄大な自然の景色が心に残りました。この年になっても記憶の底に残っていて、余生を緑の多い自然環境の中で古民家暮らしをしたいと思うようになったんです。妙高市は大好きな温泉も沢山あり、大好物の蕎麦も美味しい。幸いにも、この古民家はそんな私の思いを満たしてくれました。」
(注1)妙高市の隣に位置する長野県信濃町にある湖
私達の住む古民家の素晴らしい環境
▲角野さんの暮らす古民家。
角野さんはこの古民家を「のどか庵」と名付け、日々移り変わっていく自然の美しさに感動していると言います。
忠雄「古民家『のどか庵』は美しい田園地帯にあり、妙高山と火打山が連なる北アルプスの素晴らしい景観が望めます。周りの景色も美しく、春夏秋冬飽きることはありません。古民家から望める山並に、真っ赤に輝く美しい御来光が拝め、次第に赤から黄金に変わって輝く神秘的な光景に圧倒されます。古民家の前庭には妻が世話する花園があり、美しい花に囲まれて朝食がいただけると幸せな気持ちになります。朝の空気はひんやりとして爽快で、生き返ったように気持ち良く感じます。
(画像提供:角野忠雄)
豪雪地帯なので冬は積雪が3メートルを超えるときもあり、雪下ろしに大変な面もあります。しかし真っ白に輝く美しい雪山を見ていると、水墨画の世界に誘われたような気持ちになります。こんな条件に恵まれた所は探してもなかなか見つかりません。晴れの日の夜には、満点の星空を眺めます。都会とは違い、澄み切った星空は余りにもきれいで、月の光、金星、北斗七星、等々、流れ星も見え大宇宙の輝きから目を離せません。ここでの生活は毎日が楽しく幸せを感じています。」
忠雄さんと共に移住した妻の美幸さんも、毎日の自然の変化を楽しんでいます。
美幸さん(以下敬称略)「夜になると虫たちの演奏会が始まり、コスモス、ススキが風に身を委ねて揺れています。アマガエルが2匹、毎日ポストの上にやってきます。いつも主人と『おはよう』『ご苦労さん』『さようなら』と声をかけているんです。目を丸くしあごの下をベコベコ震わせている姿は、とても可愛いです。そんなふうに毎日新しい発見があります。」
私たちのモットー
▲角野さんのお宅の近くから見える景色(画像提供:角野忠雄)
移住するにあたり、角野さんご夫婦には「こんなふうに暮らしたい」という理想がありました。
忠雄「私たちの古民家暮らしのモットーは『Slow, Simple & Quality of Life 』です。『スロー』は昔からの食べ物や作り方、風土を大切にした食生活をし、自分たちが食べる分は自ら耕し自給自足することです。『シンプル』は贅沢をせず、年相応の余生を過ごすということです。『クオリティーオブ ライフ』とは生活の質を高めることを意味し、晴耕雨読の生活を楽しんでいます。晴れの日は外に出て畑を耕し、水をまき、草刈りをします。雨が降ったときは、高齢になっても学び続けることを大切にし、二人とも好きな読書、音楽鑑賞、他に私は写真やパソコン、陶芸、妻はピアノ、俳句や習字などを楽しんでいます。」
さらに、角野さんはもう一つ大事にしていることがあると教えてくれました。
忠雄「健康を維持するために重要な3要素『運動』『栄養』『休養』を大切にした生活を心掛けています。朝の運動は近くの河原まで散歩し、帰ると朝の水まきを済ませます。朝食は今の時期は満開のコスモスの花々に囲まれて、木製のテーブルでいただきます。この花園の横に野菜畑があり、トマトやキュウリ、ナスやニンジン、レタスやシシトウなど、自分の食べられる分量だけを収穫し、パンに野菜とチーズとハム、玉子焼きを挟んでいただきます。食後はデザートに紅茶かコーヒーを味わいながら、ゆっくり楽しく今日一日の予定など話し合っています。」
美幸「矢代橋までの散歩の帰りは野草(イヌタデ、ノコンギク、ハルジオン、ヒメジオンなど)を摘んできて食卓に置いているんです。自然に身も心も癒されています。」
忠雄「腰痛があるので、ゆっくり充分な時間を取り休みます。休憩してからは花や畑の成長具合を見ながら、水やり、草刈りをします。古民家暮らしはやることが沢山あります。17時頃には作業を終え、道具を洗い、片付けをします。夕食の後は、お互いに自分の時間を大切にして趣味を楽しみながら自由に過ごしています。」
▲13年前にクラインガルテン妙高に2年間滞在していた角野さん。野菜作りや冬の除雪など、妙高での暮らしを体験した。
高齢者になって、どのように暮らしたいか?
▲美幸さんが引っ越した日の晩に書いたもの
忠雄「貝原益軒(かいばらえきけん)の『養生訓』の一節に『老いを楽しく』とあります。無私無欲、心豊かに暮らしたいと考えています。『Do it Yourself』の精神で、自分で出来ることは人任せにせず、リフォームを楽しんでいます。古民家の食堂やリビングは暗く、使い勝手が悪いので、壁を白壁にし、明るいリビングキッチンに自己流にリフォームしています。しかしながら昔の柱や梁は素晴らしく、固く丈夫で立派です。この材木を活かし、大黒柱やケヤキの梁は傷を付けないように大切にしています。
(画像提供:角野忠雄)
また昔、蚕(かいこ)を飼っていた2階部分を『アトリエ雄山』と名付け、本棚や机を手作りし、趣味の部屋として使っています。妻や孫の習字を展示したり、撮影した大自然の写真やビデオ映像を大型の画面で見たり、音楽鑑賞にも活用しています。簡単な食器棚やテーブルも幾つか製作し、キッチンの隣の部屋は、自分のペースでゆっくり時間をかけてリフォームしました。自分では出来ない壁の張替え、雨漏り、新しい配線工事、豪雪の雪下ろし等は専門業者に頼みました。古民家を維持するには補修する所も多く、自分で楽しみながら急がず出来る範囲で工夫してやらないと、手間と費用が結構かかります。」
移住を検討している方へ
忠雄「妙高に暮らし始めて3年目になりますが、良いことばかりではありません。豪雪や草刈りは腰痛持ちには大変ですが、地域の区長さんや民生委員さん、ご近所の方々はとても親切で優しい方々ばかりです。皆様に助けていただいて今日が成り立っています。大変お世話になり心から感謝しています。」
美幸「近所の方々はとても優しく、お野菜もよく頂きます。自分たちでも少しだけ作っているので、買ったことがありません。近隣の集会も楽しいです。笑ったり、話したり、歌ったり、おいしいものを頂いたり何と幸せなことでしょう。老いを楽しく、妙高に来させていただき本当に良かったです。感謝しています。」
穏やかな笑顔でそう語ってくれた角野さんご夫妻。周りの自然や人との関わりを楽しむお2人からは「一つひとつの出会いを大切にし、感謝する心」が移住生活をより豊かにしてくれることを教えていただきました。
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