プロフィール
シュミット ジョセフ(しゅみっと じょせふ)
出身:アメリカ
移住前の居住地:神奈川県
現在の居住地:妙高地域
年齢:30代
仕事:自営業(コンブチャの醸造/販売店)
経歴:ソファ製造
移住年:2024年
シュミット 朝香(しゅみっと あさか)
出身:東京都
移住前の居住地:神奈川県
現在の居住地:妙高地域
年齢:30代
仕事:自営業(コンブチャの醸造/販売店)
経歴:会社員
移住年:2024年
妙高で発酵ドリンク「Kombucha(コンブチャ)」を製造・販売するSCOBY Kombuchery(スコビー コンブチャリー、以下「SCOBY」)。ここを営むのは、アメリカ出身のシュミット・ジョセフさんと東京出身の朝香さんご夫婦だ。異なるバックグラウンドを持つ二人が出会い、妙高へ移住し、起業に至るまでには、自然へのこだわりと地道な努力、そして家族としての選択があった。
コンブチャを通じた二人の出会いと起業
アメリカの大学で生化学を学び、在学中からコンブチャやビールの醸造に興味を持っていたジョセフさん。卒業後は医薬品の品質管理に携わり、その後来日。日本では半導体エンジニアとして働いていたという。
一方の朝香さんは、東京で小売業や事務職を経験してきた。コロナ禍でファスティング(断食)に興味を持ちはじめ「コンブチャファスティング」の存在を知る。その後、友人の誕生日パーティーでジョセフさんと出会い、「本物のコンブチャを作れる」と聞いたことで一気に彼への関心が高まった。その後、二人は結婚し、日本ではまだ「生きた菌」が入った本格的なコンブチャがほとんど流通していない現状もあり、「それなら自分たちで広めたい」という思いが自然と芽生えていった。
2022年に東京でSCOBY Kombucheryを登記するも、都会にコンブチャを製造する場所を探すことは現実的ではなかった。理由は製造場所として二人が求めたのは「水がきれいな土地」だったからだ。北海道なども候補地として検討したが、送料の問題やアクセス面を考え、最終的に妙高にたどり着く。雪深い土地でありながら首都圏にも近く、良質な水に恵まれた妙高は、まさに理想的な場所だった。
コンブチャとは
コンブチャは「昆布茶」とはまったく異なる飲み物である。お茶に砂糖を加え、酢酸菌と酵母の共生体である「SCOBY(スコビー)」を用いて発酵させた微炭酸のノンアルコール飲料だ。

原料は非常にシンプルで、水・お茶・砂糖の3つ。そこに菌の働きが加わることで、独特の酸味と風味が生まれる。海外では健康志向の高まりとともに広く親しまれており、日本でも1970年代に「紅茶キノコ」として一時的にブームになった歴史がある。
SCOBYでは、加熱後も生きた菌が含まれるコンブチャの製造に取り組んでおり、保健所と相談を重ねながら、2026年2月に持ち帰りや樽で卸売販売する許可を取得した。日本ではまだ珍しい「生きた乳酸菌のコンブチャ」を提供する存在として、その価値は高い。
電気工事に1年半 ― 開業までのリアルな壁
2023年9月に空き家バンクで住まいとコンブチャ製造工場に理想的な物件を見つけ、オンラインで内見を行い、同月中に現地を訪問。その後手続きを進め、2024年1月に物件の引き渡しが完了した。順調に見えたスタートだったが、そこからが本当の挑戦だった。
最も大変だったのは、店舗としての設備を整えるための工事だった。特に大きな壁となったのが電気工事である。コンブチャ製造に欠かせない業務用機器を動かすためには三相電力が必要だとわかり、その工事を引き受けてくれる業者探しに、実に1年半もかかったという。最終的には知人の紹介でようやく工事が実現した。
また、工場の床にコンクリートを打つ作業も一苦労だった。ジョセフさんはYouTubeを見ながら一人でコンクリートを敷いた。防水加工まで施し、コンブチャ製造に適した環境を整えた。
朝香さんが出産のため里帰りしていた時期には、住居部分の改装も重なり、ジョセフさんの負担は一層大きかった。友人の力も借りながら、断熱材の追加や天井の施工、浴室の改修などを進めて、お店と住宅の改装のほとんどをDIYで行った。
そして、2025年6月のプレオープンを経て、7月、ついにSCOBY Kombucheryがグランドオープンした。

(画像提供:シュミット朝香)
ほぼDIYでここまで ― 驚きのリノベーション
SCOBYの店舗とシュミット家の住まいの大きな特徴は、その多くがDIYによって作られている点にある。電気工事を除き、ほぼすべてを自分たちの手で改装してきたし、住まいの改装は、空き家を購入してから2年経過した現在も進行中だ。
店内には、廃材を再利用した工夫が随所に見られる。例えば、厚さ30mmのカウンターの一枚板も、材木店で不要になったものを手に入れた友人から譲り受けたものだ。SCOBYの外看板の縁や、お店に入って正面に構えているグラス棚を取り囲むヘリンボーンの装飾は、引き戸の敷居を切って組み合わせて作っていた。
新たに購入したものはごくわずかで、グラス用の棚やコンブチャサーバーのうしろにある装飾された銅板など必要最低限にとどめている。その銅板の装飾は、自ら金槌で叩いて成形したというから驚きだ。


住まいのリフォームは、和室を洋室へと作り替えたり、昭和の古い浴室を一新したりと、大胆かつ丁寧に手が加えられている。


▲2間続きだった和室のBefore(上)と After(下) (画像提供:シュミット朝香)


▲昭和レトロなタイル張りだった浴室のBefore(上)とAfter(下) (画像提供:シュミット朝香)
廃材だった様々なモノが住まいの各所で形を変えて再利用され、シュミット家の一部に生まれ変わっている。限られた資源の中でも、工夫次第でここまで魅力的な空間が生まれることを実感させられる。

▲使わなくなった椅子の背柱をつなげて作った手すり


▲鹿の角でできたカップホルダーや、和室の天井材を使った吊り下げバスケット
SCOBYのコンブチャのうり
SCOBYのコンブチャの最大の魅力は、「菌が生きたまま」だということにあるそうだ。長年コンブチャ造りの経験を持つジョセフさんが、発酵の状態を見極めながら丁寧に仕込むことで、品質の高いコンブチャが生まれる。
製造には300リットルの大型タンクも導入されており、効率的な生産体制も整えられている。発酵後は冷蔵庫で炭酸をなじませるなど、細やかな工程を経て仕上げられていた。

また、妙高の雪解け水に由来する良質な水が、味わいのベースを支えている点も見逃せない。雪は生活の中では厄介な存在でもあるが(シュミット家でも移住最初の年の冬は雪が多く、屋根の雪おろしに悪戦苦闘したという)、コンブチャづくりにおいては欠かせない恵みでもある。
将来的にはホテルやロッジなどへの卸売販売も視野に入れており、コンブチャのケグ(樽)はオーダーメイドの「SCOBY」の名入りを揃えていることに、本物のコンブチャとしての自信がうかがえた。

(画像提供:シュミット朝香)
妙高市へ移住する人に伝えたいこと
妙高での暮らしについて二人が口を揃えて語るのは、「人の温かさ」だ。近所の人が野菜を分けてくれたり、イベント出店の機会を紹介してくれたりと、地域とのつながりが自然と広がっていった。取材当日も、骨折したジョセフさんのお見舞いにと、ご近所さんが「カルシウムを取って!」と言いながら牛乳を持ってきてくれた。
一方で、現実的な課題もある。季節による人の増減が大きく、特に夏は来客が少ないという。年間を通じて安定した集客をどう実現するかは、今後の課題のひとつだ。それでも、家族で過ごす時間が増えたことは、何にも代えがたい価値だとジョセフさんは言う。忙しかったサラリーマン時代と比べ、いまは家で過ごす時間が増え、子どもと向き合う日々を大切にしている。

▲きれいに整えられた裏庭ではバーベキューを楽しむことも(画像提供:シュミット朝香)
これから移住を考える人に向けては、「地域の人との関係を大切にしてほしい」と話す。そして、「もっと多くの人が移住してきて、街がにぎわってほしい」とも。
自然と人に恵まれた妙高で、自分たちらしい暮らしと仕事を形にしているシュミットさんご家族。その挑戦は、これからの時代の新しい生き方を示している。
■シュミットさんのお仕事
SCOBY Kombuchery (スコビーコンブチャリー)
コンブチャ製造販売店
■移住者が利用できる補助制度
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■妙高市で起業を考えている方が利用できる補助金
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■妙高市への移住に興味のある方はぜひご利用ください。

